ロジカルシンキング研修のゲーム|手順化と検証の進め方
この記事を監修した人石渡 恵美・福井 美和子・青栁 陽介詳しく
研修でゲームを終えたとき、「誰が勝ったか」しか残らないことがあります。どこで判断が変わったか、どんな前提で動いたか——そこが見えないと、振り返りで使える材料が何も残りません。
この問題は、ゲームの選び方より先に「何を観察するか」を決めていないことから起きます。観察の対象を勝敗でなく、手順を言葉にする場面・前提を確認する場面・条件を変えて試す場面に絞ると、振り返りで使える記録が残ります。
以下では、①何を観察したいかでゲームを選ぶ方法、②記録票の6項目、③再試行の条件設計、④業務の手順への置き換えを順に示します。
この記事でわかること
- 演習で観察すべき思考行動(手順化・前提の言語化・条件分岐・仮説と結果の比較)の定義
- 観察目的とゲームの仕組みを対応づけた選定表
- 観察記録票の6項目と書き方
- 再試行時に変える条件・変えない条件の決め方
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演習で見るのは勝敗より判断の過程
ゲームの勝敗は運・経験・チーム構成の影響を受けるため、社員の論理的思考力や適性の判定には使えません。演習の目的は勝敗の確認でなく、判断の前提・手順・条件分岐を観察することです。
たとえば同じゲームでも、「なぜその手を選んだか」を言葉にできる参加者と、感覚で動いた参加者では、振り返りで得られる気づきが異なる傾向があります。このような観察は、研修ファシリテーターの間で報告されています。勝敗はその区別を教えてくれません。
演習で観察できる思考行動は、大きく4つに分けられます。
- 手順の言語化:「まずAをして、次にBを確認する」と手を動かす前に言葉にできるか
- 前提の確認:「このルールはという前提で成り立っている」と気づけるか
- 条件分岐:「もしなら△△、そうでなければ××」と場合を分けて考えられるか
- 仮説と結果の比較:「になると思ったが、実際は△△だった。なぜか」と問い直せるか
この4つのうち、1回の演習で全部を観察しようとすると記録が散漫になります。複数項目を同時に観察すると記録の粒度がばらつきやすくなるため、1演習につき観察対象を1項目に絞ることを推奨します。
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何を観察したいかで選ぶゲームが変わる
前提の言語化・情報の分類・手順の改善という3つの観察目的を先に決め、その目的に対応するゲームの仕組みを確認してから選ぶと、演習後の記録が振り返りに使いやすくなります。
観察目的を「前提の言語化」「情報の分類」「手順の改善」のいずれかに絞ると、選定の迷いが減ります。前提を言語化したいのか、情報を分類したいのか、手順を改善したいのかによって、観察しやすいゲームの仕組みが変わります。
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表を見て迷う場合は、「参加者が声に出して理由を言いやすいか」を基準にゲームを選ぶと外れにくいです。沈黙のまま手を動かすゲームは、観察記録が取りにくくなります。
なお、ゲームの仕様(対象人数・所要時間・対象年齢)はメーカー公式情報を都度確認してください。研修での使用条件(複製・商用利用の可否)も、購入前に確認しておくと安心です。
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手順・前提・結果を残す記録票の使い方
記録票は場面・観察した事実・判断の前提・別の選択肢・次に変える手順・再試行の条件の6項目で構成します。感想でなく、その場面で実際に起きた行動と前提を事実として書くことが振り返りの質を左右します。
記録票は「感想」でなく「事実」を書く道具です。「楽しかった」「難しかった」で終わる振り返りは、次の行動につながりません。その場面で実際に起きた行動と、そのときの前提を事実として書くことが振り返りの質を左右します。
記録票の6項目は以下のとおりです。
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①〜③は「起きたこと」の記録、④〜⑥は「次に試すこと」の設計です。この2段階を分けて書くことで、振り返りが「反省」でなく「改善の計画」になります。
記録票は参加者自身が書くのが基本です。ファシリテーターが代わりに書くと、「観察した事実」と「解釈」が混ざりやすくなります。③の「判断の前提」だけは、ゲーム終了後に参加者に口頭で確認してから記録する方法も有効です。
条件を変えて再試行するときに決めておくこと
再試行では変える条件と変えない条件を事前に決め、記録票に明記します。2回目の成績改善は難易度・チーム構成・ルール理解・練習の影響が混在するため、研修の因果効果とは断定できません。
再試行の目的は「成績を上げること」でなく、「手順を変えたときに何が変わるかを確かめること」です。2回目の成績が上がっても、それが手順改善の効果とは断定できません。難易度が下がれば成績は上がりやすく、チーム構成が変わると協力の質が変わり、ルール理解が進めば戦略が立てやすくなるため、これらの変化と手順改善の効果を区別する必要があります。
再試行を設計するときは、以下の2点を事前に決めておきます。
- 変える条件:手順(動く前に前提を声に出す)、役割分担(情報収集担当を決める)など
- 変えない条件:チーム構成、ゲームの難易度、制限時間など
「変えた条件」と「変えなかった条件」を記録票の⑥に明記しておくと、1回目と2回目を比べるときの根拠が残ります。変えた条件が複数あると、どれが結果に影響したかが分からなくなるため、1回の再試行で変える条件は1つに絞るのが原則です。
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迷ったら「手順だけ変えてチームは固定」が最初の再試行として有力です。チーム構成や難易度を同時に変えると、比較の根拠が残りません。
ゲームの振り返りを仕事の手順へ置き換える
振り返りの最後に「この判断の前提は、今週の仕事のどの場面に似ているか」を問うと、演習の気づきが業務の手順改善につながりやすくなります。翌週に試す行動を一つ決めるところまでを振り返りの範囲とします。
研修内の成績と業務への応用は別の話として扱い、翌週に試す行動を一つ決めるところまでを振り返りの範囲とします。
置き換えの問いは、以下の3段階で設計します。
- Step 1. 場面を特定する:「ゲームで前提を確認せずに動いた場面は、仕事のの場面に似ている」
- Step 2. 手順を言葉にする:「その場面で、次回はを先に確認してから動く」
- Step 3. 確かめ方を決める:「翌週のの場面でその手順を試し、結果を記録票に書く」
Step 3まで決めないと、研修が「気づきで終わる」経験になります。翌週に試す行動は、具体的な業務の場面と結びついた一文で書くことが大切です。
ロジカルシンキング研修のゲームに関するよくある質問
勝敗は評価に使わないのが基本です。ゲームの結果は運・経験・チーム構成・ルール理解の速さなど複数の要因が重なるため、個人の論理的思考力を反映しているとは言えません。評価に使う観察指標は、「手順を言葉にできたか」「前提を確認してから動いたか」「条件を変えて試したか」など、行動レベルで設定します。
1演習につき1項目を目安とします。4つの思考行動(手順の言語化・前提の確認・条件分岐・仮説と結果の比較)を一度に観察しようとすると、記録の粒度がばらつきやすくなり振り返りで使える材料が残りません。研修の目的に合わせて項目を絞り、記録票もその項目に対応した書き方にします。
対象人数・所要時間・対象年齢をメーカー公式情報で確認することと、商用研修での使用・教材の複製が許可されているかを確認することの2点が先決です。ルールブックの解釈が複数あるゲームは、研修前にファシリテーターが統一解釈を決めておくと、「ルールの読み方の違い」が観察の邪魔になりません。
成績の改善だけでは効果の根拠にはなりません。2回目は慣れ・ルール理解・練習の影響が加わるため、成績の変化と手順改善の効果を分けて考える必要があります。「変えた条件(手順)と変えなかった条件(チーム・難易度)を記録票に明記し、参加者が自分で変化の理由を説明できるか」を確認する方が、振り返りの根拠として機能します。
「翌週に試す行動を一文で決める」ところまでを振り返りの最低ラインとします。業務の場面との対応づけ(Step 1)と翌週の行動(Step 2)だけでも、演習が「気づきで終わる」状態は防げます。確かめ方(Step 3)は翌週の業務後に別途記録する形にすると、研修内の時間を圧迫しません。
参考文献
- 日本能率協会 マネジメントスクール(研修テーマの存在根拠として参照)(2026年9月確認)
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