知育

幼児教育とはどういうもの?さまざまな考え方や家庭での姿勢を学ぼう

子どもへの本格的な教育は、いつから始めるのが適切なのでしょうか。特に未就学児を抱える親の中には、早い段階から教育を始めるのは子どもへの負担になるのではと考えている家庭も多いでしょう。しかし、実は子どもへの教育はなるべく早い段階から始めたほうが良いといわれています。幼児教育の概念も、そのような早期における教育の有効性に基づいて生み出されたものです。とはいえ、幼児期は成長や発達の個人差が大きいため、自分の子どもにはどういう教育をするべきなのかわからないという人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、幼児教育の基礎知識や幼児期の教育で大切なことなどについて詳しく解説します。

なぜ重要?幼児教育という概念

幼児教育が対象にしている幼児とは、広義的には小学校に上がる前の未就学児のことを指します。より具体的に定義すると、0歳から6歳までの子どもを総称して幼児といいます。幼児教育とは、この段階の子どもに特化した教育のことです。ただし、幼児教育は何も特別な教育というわけではありません。たとえば、幼稚園や保育園での学習も幼児教育の一種ですし、家庭内で個人的に学びの機会を設けるのも幼児教育の範疇に含まれます。つまり、幼児教育とは、幼稚園、保育園、家庭内、はたまた地域社会まで、公私を問わない大きな広がりを持った概念なのです。

幼児教育が重要だといわれる理由

0歳から6歳までの幼児期は、さまざまなことを吸収して成長・発達していく時期です。脳の大脳神経系は幼児期に約80%が完成するとされ、言語能力や学習能力、身体能力が急激に発達するのもこの時期です。人格形成や思考力の土台を作るのに最適な時期であり、幼児期に適切な教育を施すかどうかで、子どもの将来にも大きな影響を与えるといわれています。

早期教育との違い

幼児教育は、しばしば早期教育と混同されて認識されがちです。しかし、幼児教育と早期教育は本質的に異なる概念です。早期教育とは、特定の専門的分野に特化した教育だとされます。たとえば、受検を見越した勉強や、幼児期における芸術・運動分野などの英才教育は早期教育にあたります。これに対して、幼児教育は子どもの発達に合わせ、生涯にわたる人間性や学習の土台を作るものです。早期教育が知識や技能の「先取り」であるとしたら、幼児教育は「後伸びする力」を養うことに目的があります。子どもの特性を重視し、一人一人の内面に働きかけることで、その芽を良い方向に伸ばしていこうというのが幼児教育の理念です。むしろ、幼児教育と早期教育は対立する概念といっても過言ではないでしょう。

幼児教育にはどういう手法がある?海外発の教育法

幼児教育には場所や手法に決まりはないため、家庭内での教育も幼児教育の一種とされますが、人格形成に重要な人との関わりを養うには、何より集団の中での教育が欠かせません。したがって、現代の幼児教育は、幼稚園や保育園がその中核を担い、幼児教育は幼稚園・保育園教育とほとんど同義と扱われることもあります。実際、家庭のみで幼児教育を網羅することは難しいため、成長や発達に適切な環境を与えるためにも、幼稚園や保育園は重要な位置づけあるといえます。

ただし、全ての幼稚園・保育園が同じ教育手法を実施しているわけではありません。幼児教育にはさまざまな考え方や手法があり、幼稚園や保育園は園の教育方針に基づいて最適な幼児教育の手法を取り入れています。ですから、自分の子どもに合った教育を受けさせるためにも、入園させる予定の幼稚園や保育園がどういう幼児教育を採用しているのかしっかりチェックしたいところです。それでは、幼児教育の手法には実際にどのようなものがあるのでしょうか。まずは、海外で生み出されて日本でもポピュラーな幼児教育の手法を見てみましょう。

子どもの「からだ」に着目したシュタイナー教育

シュタイナー教育は、オーストリアの哲学者であるルドルフ・シュタイナーによって考案された教育法です。シュタイナーが1919年に最初の学校を設立した当初は、たばこ工場で働く労働者の子どもたちに向けた教育でした。シュタイナー教育は、特に子どもの成長段階に着目した教育法です。子どもの成長を0歳から21歳まで7年ずつの3段階に分け、それぞれの年代に応じた適切な教育を行っていくというのがこのシュタイナー教育の基本理念です。

そのうち、0歳から7歳までの期間は、「からだ」を成長させる期間だとされます。健康的な「からだ」を作るため、規則正しい生活リズムを身に付けさせ、自然素材のおもちゃなどを使ってとにかく手足をたくさん動かすことに主眼を置きます。そのため、シュタイナー教育においては、ゲームなどの既製品を使った遊びをはじめ、絵本の読み聞かせやテレビを観せることなども推奨しません。受験などの知的な早期教育も避けるべきだとされ、言葉を使って教えるのではなく、大人の行動や体の動きを真似させることで子どもの自発的な成長を促します。

また、シュタイナー教育は「からだ」だけではなく「こころ」の育成も重視する教育法です。教育を「感情や意志に働きかける総合芸術」として捉えているので、シュタイナー教育ではオイリュトミーやフォルメンと呼ばれる音楽や絵画を使った教育法も取り入れられています。子どもの自主性を重んじ、「こころ」と「からだ」の両面から健やかな成長を促す教育法です。

世界中で親しまれるモンテッソーリ教育

モンテッソーリ教育とは、今から100年以上前にイタリアで提唱された教育法です。医師であり教育家でもあったマリア・モンテッソーリ博士によって生み出されました。現代でも数多い国で親しまれている教育法であり、世界で140以上の国や地域で取り入れているとされています。

モンテッソーリ教育の理念は、子どもの自立性を重んじる教育法です。モンテッソーリ博士によれば、子どもには自らを育てる力、すなわち「自己教育力」があるとされます。モンテッソーリ教育は、この自己教育力を活かすことを重視した教育です。大人の教育に当てはめるのではなく、子どもの自発的な興味関心に着目し、子ども自身に考えさせることを優先するのがモンテッソーリ教育の理念です。周囲の大人のするべきことは、積極的に指導することではありません。それより、子どもが自発的に活動する環境を整え、サポートするのが大人の役割だと捉えています。

モンテッソーリ教育は、医師でもあった博士によって科学的根拠に基づいたメソッドが用いられている点も特徴です。0歳から6歳までの子どもを前期と後期の2段階に分け、それぞれの年齢に応じた最適な環境を提供します。同じ年齢の子どもだけではなく、異なる年齢の子どもを集めた縦割り式の保育となるため、幅広い年齢の子どもと関わらせたいという人に適した教育法でもあるでしょう。

近年注目のピラミッドメソッド幼児教育法

「Cito(チト)」と呼ばれるオランダ政府教育評価機構が提唱したピラミッドメソッド幼児教育法は、近年急速に注目を集めている教育メソッドです。この教育法では、「子どもの自主性(やる気)」「保育者の自主性(働きかけ)」「寄り添うこと」「距離を置くこと」という4つの基礎概念を挙げています。これらの概念が相互に関連し合うことで、ピラミッドの土台のような人格の基礎が形成されるというのがピラミッドメソッドの主眼です。

特徴的なのは、子どもだけではなく保育者の自主性が基礎概念として盛り込まれている点です。子どもが自主性を発揮するためには、保育者が子どもの要求をくみ取って適切に働きかける必要があります。そのためにも、まずは安心できる環境を整え、変わらない支援を送り続ける保育者の姿勢が求められるのです。こうした理念に基づいて、ピラミッドメソッドでは子どもが自由に遊んだり学んだりできる保育環境を整備することを提唱しています。その中で、子どもの自主性を養うために、準備された保育室のどの場所で遊ぶのか、目に見える形で提供するのが重要だと説いています。

子どもの発達を個性や知覚、運動や芸術といった8つの領域に分類し、それぞれの領域に沿ったテーマ別の「プロジェクト」を用意するのもピラミッドメソッドの特徴です。プロジェクトのテーマは全部で11個あり、日常的な遊びや体験を通じて子どもに自主性や創造性を学ばせることを目的としています。また、子どもだけではなく、保育者の自主性を培うために、保護者活動のカリキュラムなども充実しています。

興味関心を重視するレッジョ・エミリア・アプローチ

レッジョ・エミリア・アプローチとは、子どもの興味や関心に着目し、体験を通して子ども自身が学んでいくことを主眼に置いたメソッドです。大人が導いて問題を解決するのではなく、「解決の方向性」を示すことで子どもの自主性や創造性を育もうというのがこの教育法の目的です。そのため、特別な教材や学期ごとの細かいカリキュラムはなく、園内の活動は子どもの興味や関心に基づいて進められます。大人は子どもの興味・関心に寄り添い、話し合いを通じて子ども自身が自ら行動を選択できるようにサポートする存在です。子どもの考える力や自主性を重んじた教育法で、幼児教育にとどまらず、米国では大手企業の社内プリスクールでも導入されているメソッドです。

日本が発祥の幼児教育法

海外で生まれた幼児教育法は、子どもの自主性を重んじるものが多い印象です。一方、日本発祥の幼児教育法は、もちろん自主性を重視した教育法もありますが、海外発のメソッドとは少し毛色が異なるものもあります。以下、日本発祥の幼児教育法について見ていきましょう。

右脳を重視する七田式教育法

七田式教育法は、日本で生まれた有名な幼児教育法のひとつです。七田眞という人物によって提唱された七田式教育法は、日本を含め全世界で約100万人が学んでいる教育法だとされています。七田式教育法の特徴は、0歳から6歳までに発達する脳の分野に着目した教育法です。右脳と左脳をバランスよく育てることを目指しながら、特に右脳のトレーニングを積極的に取り入れています。とりわけ、フラッシュカードを使った右脳トレーニングは国内外で有名です。

また、七田式教育法は心の教育も大切にしています。「認めて、ほめて、愛して、育てる」というキーワードを積極的に発信し、子どもの心の豊かさを育むことに重きを置いた教育が特徴です。叱るのではなく、認めて、ほめることによって、自信や自己肯定感に満ちあふれた子どもを育てることを重視しています。

子どもは天才!ヨコミネ式教育法

ヨコミネ式教育法とは、横峯吉文氏によって提唱された教育法です。YYプロジェクトとも呼ばれ、提唱者の横峯氏が長年保育園の運営に携わる中で生み出された教育メソッドです。ヨコミネ式教育法では、まず、「子どもはすべて天才であり、ダメな子は一人もいない」という発想から始まります。この理念に基づいて、子どもが自ら考え、自ら発想したり行動したりできることを目指すのがヨコミネ式教育法の基本的な手法です。

子どもが自主的に活動するには、まず子どものやる気を引き出さなければなりません。ヨコミネ式教育法では、子どものやる気を引き出すスイッチを4つ提唱し、そのスイッチを押してやる気を促すことが保育者の役割だと定義しています。4つのスイッチとは、「競争したがる」「真似したがる」「少し難しいことをしたがる」「認められたがる」の4つです。この4つのスイッチが、子どもの可能性を広げるきっかけになると捉えています。

また、ヨコミネ式教育法が子どもの自主性を育むうえで大切にしているのが、「学ぶ力」「体の力」「心の力」という3つの力です。ヨコミネ式教育法で実施される読み書きや体操、音楽といった取り組みも、この3つの力を引き出すために行われます。

漢字で有名な石井式教育法

教育学者である石井勲氏によって提唱された石井式教育法は、特に幼少期の言語教育に力を入れている教育法です。石井式教育法では、記憶力に優れた幼児期に言語教育を施すことで、人間の知性が持つ可能性を開き、能力を大きく飛躍させるきっかけになると考えます。言葉は思考の土台になるため、早いうちから言葉を身に付けさせることで、豊かな表現力やコミュニケーション能力を養おうというのが石井式教育法の目的です。

言語教育の中でも、特に重視されているのが漢字教育です。石井式教育法が提供する漢字教育は、「石井式漢字教育」とも評され、漢字絵本やオリジナルカードを使い、遊びや体験の中で自然と漢字を学べるシステムになっています。漢字という文字は、ひらがなやカタカナと違ってそれ自体に意味が含まれる表意文字であるため、子どもにとっては単なる音の表記に過ぎないひらがなやカタカナより覚えやすいというのが石井式教育法における漢字の定義です。この定義に基づいて作られたのが石井式漢字教育です。もちろん、漢字教育だけではなく、年齢に応じたカリキュラムによって、数字や計算などの学習も行われます。

押し付けるのではなく見守る!幼児教育で保護者が意識したいこと

大辞泉によれば、教育とは「ある人間を望ましい姿に変化させるために、身心両面にわたって、意図的、計画的に働きかけること」とあります。この意味の通り、教育はただ大人が子どもに対して「一方的に教える」ものではなく、あくまで働きかけるものです。幼児教育においても、保護者にはそのような姿勢が求められます。それでは、正しい幼児教育を行うために、保護者はどのような態度で臨めばいいのでしょうか。ここでは、幼児教育で保護者が意識したいことを解説します。

子どもの興味や関心を見つける

幼児教育の目的は、豊かな人格の形成や、自主性・協調性を学ばせる点にあります。にもかかわらず、親が自分の願望を子どもに押し付けていては、いつまでたっても自立性や自主性は育ちません。ですから、まずは子どもを良く観察し、子どもが何に興味・関心を持っているのか見極めましょう。子どもは自分で興味を持った物事にはとことんのめり込むものです。それを探し、サポートしてあげるのが保護者の役割なのです。

成功体験を創出する

子どもに達成感や自己肯定感を身に付けさせることも、幼児教育においては重要なプロセスです。子どもが何か始めれば、親として見守る機会も増えるでしょう。その際、親も一緒になって遊んだり、体験したりすることは重要です。その中で、子どもが何かに成功したり、達成したりしたら、思い切りほめてあげましょう。一緒になって喜び、ほめることで、子どもは成功体験を培います。その成功体験が、次の自主的な行動を生み、さらなる可能性を広げることにつながります。

子どもの発達段階に応じた教育を

幼児教育では、0歳から6歳までの未就学児が一緒くたにまとめられがちです。しかし、たとえば3歳と6歳では成長や発達に大きな違いがあります。3~4歳程度であれば、まだ言葉を覚えたてなので、言語能力や他人との協調性を培うのに適した年齢です。就学直前になってくると、生活習慣が身に付き、机に座って学習することもできるようになるでしょう。このように、同じ幼児期でも、年齢によって適した教育法があります。保護者として、子どもの適齢を見極め、最適な幼児教育が受けられるような環境を整えてあげましょう。

サポート体制の充実を!子どもが成長できる環境を整えよう

幼少期の子どもは、大人でも想像がつかないほどの目覚ましい成長を遂げます。もちろん、成長過程でつまずくこともあるかもしれませんが、親として何より大切なのは、見守り、サポートすることです。そして、子どもが日常の遊びや生活の中で自然に成長していける環境を用意してあげることも親の役割です。幼児教育においては、見守る親の姿勢も重要だとされます。子どもに合った方法を見つけ、自分も一緒に成長していけるようにしっかりサポートしましょう。